IT化が避けて通れない現代において、企業の経営上IT技術を活用するための専門家が多く求められています。国としてもこういった企業のニーズに答えるべく、情報処理技術者試験の中に「ITストラテジスト」というレベル4の最上位試験を2009年度に新設しました。
情報処理推進機構では、ITストラテジストの対象者を、「高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術を活用して改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者」と定義しています。つまり、ITを活用して経営戦略を組み立て、実現する能力のある人ということになります。
2000年までは年齢制限がありましたが、現在では制限は無くなり、業務経歴も不要となったことで、受験のハードルが下がっています。しかし、最難関のレベル4であることに変わりはなく、合格率は平均で15%ほどです。出題内容も、システム戦略、システム企画、経営戦略マネジメント、技術戦略マネジメント、ビジネスインダストリ、企業活動、法務などといった分野で、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験とは別物といってよい内容となっています。また、論述式問題が3問も出題されることから、知識だけでなく、問題改善の着眼点や計画能力、そしてそれを正確に伝えるための文章力も必要になります。
25歳くらいから65歳くらいまで、資格保有者の年代は幅広いものがあります。多くは30代から40代の働き盛りで、職種は多種多様です。情報処理技術者試験は、ペーパーテストのみなので、資格に合格したからといって、直接的に仕事につながる何かがあるわけではありません。しかし、年々日本の中小企業においてもITの重要性が高まり、ストラテジスト(日本語としては、「戦略家」や「策士」などといった意味)の需要が高まっています。コンサルタントを目指す人はもちろんのこと、一般企業のIT部門長であっても取得しておきたい資格といえるでしょう。
ちなみに、警視庁が募集するプロフェッショナル候補情報通信職員やコンピュータ犯罪捜査官、サイバー犯罪捜査官などに応募するには、ITストラテジストをはじめとする情報処理技術者試験のレベル4に合格していることが条件となっています。
<ITストラテジスト試験(ST)~ 経営とITを結びつける戦略家 ~>
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/st.html